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2022/1/30

千⾥の道も⼀歩から。「吃⼈⼀⼝,還⼈⼀⽃」
 台湾国際⼝唇⼝蓋裂医師研修プログラム(胎児の超⾳波診断から分娩後の治療まで)および台湾に対するワクチン提供国への奨学⾦研修プログラムについて

 (日本語字幕付き)

時間:2022/01/05

著者:張東曜医師 / 翻訳者:長田莉沙

中国語版(Traditional Chinese)

2017年の終わり、長庚病院の盧亭辰先⽣の紹介により、看護師の王儒萱と私は台北医⼤ 学に向かいました。そこで当時長庚病院から台北医⼤に移動してきたばかりの陳國鼎先⽣ と⼝唇⼝蓋裂の胎児を診る合同外来を立ち上げたところから、私たちの少し特別な道のり が始まります。
 陳國鼎先⽣は長庚病院在院当時から、国際的に著名な⼝唇⼝蓋裂治療におけるエキスパー トでいらっしゃり、私たち台児クリニックが出産前診断で⼝唇⼝蓋裂胎児と診断した際 の、⼤変信頼する紹介先でもありましたが、当時は何年もの間、⼀対⼀でコミュニケー ションを取る機会はありませんでした。

かつて、⼝唇⼝蓋裂の⾚ちゃんを妊娠された⽅々は、何枚かのエコー写真を持ち込んで陳 先⽣の外来を受診していましたが、時間も情報も限られていた為、なかなか納得のいく治 療を⾏うことができませんでした。私は、胎児医学をより良くするために、このような状 況を変えなければならないといつも考えてきました。胎児⼼臓病の分野では、⾺偕⼩児循 環器内科の陳銘仁先⽣、神奈川県立こども医療センター⼩児循環器内科の川滝元良先⽣と 長年の提携をとっており、⼤変多くのことを学ばせていただいた関係から、台児クリニッ クも⼩児⼼臓科の池宛玲と黃怡伶先⽣を採⽤することを決定しました。専⾨を跨いだ連携 こそが、胎児医学をより良くするキーポイントだと強く感じたからです。そこで胎児⼼臓 病合同外来を⾏うように、陳國鼎先⽣をお招きし、胎児の超⾳波検査をご⼀緒にお願いし たいと思いました。

これは、胎児の超⾳波トレーニングをまったく受けていない形成外科医にとっては全くの 新しいチャレンジであり、陳國鼎先⽣がこの挑戦を受け入れてくださるとは思ってもいま せんでした。陳先⽣に最⾼⽔準のトレーニングを受けていただく為、私は、⼝唇⼝蓋裂胎 児の診断で豊富な経験を持つ埔基産婦⼈科の李⽂⾞先⽣にご協⼒を賜り、台児クリニック にて、楊⼦逸医師と、若くエネルギッシュで、強い学習能⼒を持つ放射線技師達へ定期的 な指導をいただきました。もちろん、最も重要なことは、陳國鼎先⽣にエコー画像の⾒⽅ を教えることですが、、、。

何年かして、私は陳國鼎先⽣こそが台児クリニックチーム全体の診断能⼒が上がったキー パーソンだということに気づきました。なぜなら、私たちの胎児診断は、陳國鼎先⽣が産後と⼿術結果をフォローアップし続けて くださるからこそ、継続できるものだったからです。 つまり、私たちは世界でも数少ない産前産後統合のチームであり、 だからこそ、⾓度が違った⾒解を得ることができたのです。

私たちは治療チームを出⽣前の時期に立ち合わせるので、妊娠中期には、正確な超⾳波診 断により、18歳までの治療計画を立てることができます。そのおかげもあり、出産前に陳 先⽣の的確な診断を受けた患者の85%が妊娠を継続することを決定したのに対し、85% は妊娠を続けないことを選択したことがわかりました。このデータを通し、⼝唇裂や⼝蓋 裂を出⽣前に治療することはまだ不可能ですが、両親の⼼を最初に治療できれば、両親に サポートの⼒を与えることができ、勇気を持って将来の課題に立ち向かっていただくこと が可能だと証明できるでしょう。 (注1)

2021年5⽉、コロナの⼤流⾏によりワクチンが不⾜し、台湾は危機に陥り、陳先⽣のサ ポートもリモート会議の形式に変更されていました。以前から川滝元良先⽣には、私たちの特別な⼝唇⼝蓋裂胎児の合同外来についての話題を 何回か挙げさせていただいておりましたが、5⽉中旬に⽇本の川滝元良先⽣より、彼の学 ⽣が担当する⼭形県の⼝唇⼝蓋裂胎児の診断をリモートでサポートしてほしいとお声がけ をいただきました。そこで、台児クリニックで⼝唇⼝蓋裂胎児の合同外来を⾏っている時 間を選び、同時に⼭形県にいらっしゃる医師と超⾳波技師の⽅と共に診断・問診を⾏いま した。その間、川滝先⽣もずっとオンライン上で⾒守ってくださり、来⽉(2021/06/09) にもう⼀度このような機会を作ること、そしてその際には神奈川県立こども医療センター の産科・⼩児科・⼝唇⼝蓋裂チームも共に参加してくださることをお約束いただきました。

台湾がワクチン不⾜の危機に瀕していたとき、2021年6⽉4⽇に⽇本が真っ先にワクチン を寄贈してくださり、台湾は⼤いに勇気づけられました。 2021年6⽉9⽇に再度リモート 上でビデオ通話させていただいた際、私は感謝の気持ちを表した背景写真を作り、川滝先 ⽣と⽇本の友⼈達に感謝の意を述べました。また、ワクチンを使ってお返しをすることは できないので、トレーニングという⽅法を使って恩返しをしてみたらどうだろうとこっそ り思いついたのはこの時でした。

2021年末までに、アメリカ、⽇本、リトアニア、スロバキア、チェコ共和国、ポーラン ドを含む合計6か国がワクチンを提供してくださったことは、⼈々の⼼を安定させ、私た ちの健康を守ることに⼤きく貢献してくださいました。その間、台湾では⼈々がリトアニ アのチョコレートを爆買いする現象が起こり、私も皆に倣って購入しましたが2ヶ⽉近く 待ってやっと商品を受け取ることができました。台湾⼈のお茶⽬なところが⾒えた瞬間で した。

2021年9⽉末、陳國鼎先⽣の紹介により、台北医科⼤学付属病院の邱仲峰院長がチームを 率いて台児クリニックに訪問され、また私が10⽉に台北医科⼤学附属病院婦⼈科の朝会議 で台児クリニックの発展と胎児医学の経験をお話する機会を作ってくださり、多くの反響 がありました。陳先⽣との話し合いを経て、双⽅ともに新しい国際⼝唇⼝蓋裂医師研修プ ログラム計画を立ち上げることを決定しました。⼝唇⼝蓋裂の出産前エコー診断を国際⼝ 唇⼝蓋裂医師研修プログラムの中に新しく取り入れ、ワクチン提供国の6国には奨学⾦も 提供されます。台湾の古い諺「吃⼈⼀⼝,還⼈⼀⽃」(他⼈に親切にされたら、倍にして 恩返しをしなさいと⾔う意味)を実⾏に移したいと思います。

新しい国際⼝唇⼝蓋裂医師研修プログラム計画では、台湾胎児医学推進協会の秘書長であ る崔艾湄博⼠により指揮が取られ、台北医科⼤学附属病院によって承認された後、陳先⽣ と私で政府や⺠間各界からの⽀援を求めました。私が所属するロータリークラブの会長で ある黃凱亮⽒の呼びかけの下、会員全員が私たちに多⼤な⽀援と激励を与えてくれまし た。そこでふいに前無所属⼤使であり、中⼭医学⼤学医療センター主任の林靜儀医師のことを 思い出したのですが、これは国際医療の連携を強化する良い⽅法だと思い、⽅向性のアド バイスをお願いしました。なんと林先⽣はすぐに同意してくださり、わずか7⽇間で王定 宇立法委員に関係部会を招集した記者会⾒実施の⼿筈を整えてくださるようお⼒添えいた だき、この「善のサイクル」が始動されました。『爆買い以外にも、台湾⼈にはもっとで きることがあるのだ』と世界に知らせたいと思います。

この⽂章を執筆している時点では、このプロジェクトの中国語と英語のプロモーションビ デオの台本を完成させたばかりです。6か国語バージョンを完成させたいと思っています が、プロジェクトの紹介と申請フォームはまだ英訳のみです。台本は完成間近で、台湾胎 児医学振興会のFellowship for Facial Cleftsウェブサイトにも掲載されたばかりです。また 無所属⼤使の林靜儀医師も第⼆選挙区立法委員会補⽋選挙の真っ只中ですが、私たちは世 界に向けて声をあげることを待ちきれません。みんなで努⼒を続けましょう、「台湾の良さを世界に⾒せるために。」

註一:Multidisciplinary team approach to the prenatal management of orofacial clefts: a single center cohort study in Taiwan. Hsuan Ko, Tung-Yao Chang, Eric C Lussier, Ksenia Olisova, Chan-Yu Sung, Philip Kuo-Ting Chen, Wen-Chu Li, Tze-Yi Yang, Ru-Xuan Wang. Sci Rep. 2020 Aug 18;10(1):13916

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